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どさくさに紛れて犠牲者の仲間入りをしようというのは、いただけない。
やはりどこかに感覚の狂いがある。
「自動車は国家なり」の思い込みが激し過ぎるのではあるまいか。
第二に、保護は救済につながらず、である。
私企業が公的保護を受けることで、窮地から脱したというケースは、歴史的にみて実に稀である。
そもそも、自力展開出来なくなったものが、公的保護を受けてしまえば、ますます足腰は弱くなる。
かつて日米通商摩擦華やかなりし頃、アメリカの主要産業が軒並みこれを体験している。
日本からの輸入を規制してもらったり、補助金を出してもらったりしたことで、一体、誰かが見事に立ち直ったか。
答えは否だ。
繊維産業においても、鉄鋼業においても、電子産業においても、そして自動車産業においても。
ところが、現実の展開はこの歴史の教訓を無視して自動車産業に対する保護措置を次々と繰り出す方向に向かつている。
そのための財源として、さしあたり使われているのが前述のTARPである。
そもそもは金融機関の不良債権処理と信用収縮防止を目的とする政策であったものが、いまや自動車産業向けの産業政策の側面を帯びるに至っているのである。
具体的には、まず一二月一九日に資金繰り支援措置ということで、GMに対して一三四億ドル、クライスラーに対して四○億ドルの緊急融資を行うことが決まった。
さらに、二九日にはGMの金融子会社GMACに対して五○億ドルの資本注入を行うこととなった。
オバマ新政権が発足すれば、一九三○年代以来の超大型の経済対策が始動することになる。
その中でも、自動車産業に対する新たな支援措置が打ち出される見込みだ。
保護は救済に決してつながらない。
保護は保護の連鎖を生むだけである。
それが歯止めなく広がれば、地球経済は地球経済でなくなる。
連鎖と融合のグローバル時代は、分断と排除のブロック化時代に場所を明け渡すことになってしまう。
この展開を阻止することが出来るか。
それが国々に問われている。
グローバル恐慌が我々をそこまで追い詰めている。
保護主義の靴音金融暴走時代の向こう側で我々を待っているものは何なのだろう。
さしあたり、しのびよる保護主義の靴音が聞こえる。
保護主義には、二つの側面がある。
その一が通商戦争だ。
そして、その二が通貨戦争である。
通商戦争は、自国産業に対する保護合戦という形で、既に火ぶたを切りそうな気配を示している。
これが本格化すれば、次に来るのは、モノの移動に対する直接的な制限行動だ。
前述の通り、さしあたりG別金融サミットの合意によって、あからさまな貿易制限的措置は一応封印されている。
だが、これも報復合戦状態になれば、どこまで効力を保持出来るかは疑問だ。
あまり当てにはならない。
多角的な通商システムを保護主義の悪魔からどこまで守れるか。
それが重要な課題となりつつある。
第二の通貨戦争とはいいかえれば、為替切り下げ競争だが、これはまだあまり顕在化してはない。
だが、兆候はある。
アメリカのポールソン財務長官が中国に出向いた折、「強い人民元」の重要性を強調した。
暗に、今の人民元相場は低すぎるという判断をにじませたのである。
事実、このところ、人民元相場は動きが止まっている。
二○○五年にドル連動制から通貨バスケット連動制に通貨制度を変えて以来、緩やかながら上昇軌道を辿って来たのだが、ここに来て、その流れが小休止状態になっている。
意図的な人民元安政策が再開されたのではないか。
アメリカはそう疑り始めたようだ。
通貨戦争が始まってしまえば、国々が一致団結してグローバル恐慌の衝撃に立ち向かうことは完全に不可能になる。
通貨協調に向けての早目の合意が賢明だろう。
モノとカネの再接近、そのさらに先はどうか。
ここで、提起したモノとカネの決別問題を改めて考えてみなければならない。
モノとカネが結びついたところで資本主義が出現したのであれば、モノとカネが決別した今、我々は一体何と呼ぶべき経済体制の下に身をおいているのだろうか。
そのような経済体制はどのような原理に従って動くのだろうか。
仮にこの状態をひとまず二一世紀型資本主義と呼ぶとするなら、その特徴についていえることは何か。
一つには、それは管理通貨制の下で恐慌が起きる世界だ。
金融が一人歩きするから、そういうことになる。
従来型の資本主義がもたらした過剰生産問題が、二一世紀型資本主義の下では、カネの世界で、その世界に固有の力学に従って発生するのである。
そこに存在する固有の力学とは、ハイリスク・ハイリターンの力学である。
従来型の資本主義の中では、ハイリターンを求めてハイリスクを取る冒険主義は、投機の世界にその行動範囲を限られていた。
だが、今は違う。
投資銀行業務という名の下に、この行動が通常ビジネスの一環を構成するようになっている。
ここで、注意を要する大きな問題がある。
それは、一人歩きするカネの世界が、こっそりとモノの世界に再接近しているということだ。
最初にみた一つの展開を思い出して頂きたい。
メリルリンチ社がバンク・オブ・アメリカに身売りした。
ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの両社が銀行持ち株会社に衣替えした。
こうした行動によって、これらの投資銀行たちは商業銀行の世界にアクセスをつけた。
そして、商業銀行ビジネスは、一二世紀型資本主義の中にあっても、今なお、モノの世界と結びついている。
商業銀行たちは企業や人々から預金を受け入れ、企業や人々に資金を貸しつける。
彼らが企業や人々に貸す資金は、直接・間接にモノの世界を動かす血流の役割を果たしている。
そこには、今なお、モノづくりとカネ回しが結びついた従来型資本主義の関係がある。
そこに、全く異なる原理で動く一人歩き型の金融が破綻の難を逃れようと飛び込んで来た。
これを放置しておいて大丈夫だろうか。
改めて銀行・証券間の垣根問題を再考する必要がありそうだ。
モノの世界との結びつきを回復したいのであれば、二一世紀型のカネの世界も、少なくともその部分については行動を改めてもらう必要があるだろう。
素行の悪さをそのままにして、元のさやに戻ろうというのは、やはり、虫が良すぎるというものだ。
態度を改めるのがイヤなら、やはりカップル再解消しかない。
銀行・証券間の垣根を復活して兼業を禁止するか、投資銀行業務に関しても、商業銀行業務と同様の規制・監督体制を整えるか。
二つに一つだろう。
モノの世界で起きる変化によって、カネがおのずとモノに再び引き寄せられる可能性はあるだろうか。
そのような新展開が起こりそうな分野として、どのようなものが考えられるか。
さしあたり思い浮かぶのが、医療・介護・教育・環境・貧困救済といった分野でグローバル時代の資本三世紀型資本主義の第二の特徴は、いうまでもなく、そのグローバル性である。
従来型の資本主義は基本的に国民国家をその展開の主舞台としていた。
むろん、産業資本が国境を越えて収益を追求しなかったわけではない。
だが、その生産活動はあくまでも国民国家の枠内で行われた。
だからこそ、一九世紀の経済的覇権争いは植民地主義の形を取った。
国民国家の枠組を外延的に拡大することで資本の論理を貫徹したわけである。
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